「お腹が痛い……」
「今日は学校に行きたくない」
忙しい朝の時間帯、お子さんから突然こう言われて、ドキッとした経験はありませんか?
熱を測っても平熱。どこか悪いわけではなさそうだけど、表情は暗い。
「このまま不登校になったらどうしよう」「私の育て方が悪かったのかな」と、不安が一気に押し寄せてくるかもしれません。
まず、深呼吸をしてください。
子どもが「小学校に行きたくない」と言うのは、決して珍しいことではありません。 むしろ、多くの家庭が一度は経験する「普通」の出来事であり、子どもの成長過程における一つのサインです。
この記事では、突然の「行きたくない」に戸惑う親御さんに向けて、その心理的背景や原因、そして親ができる具体的な対応策を、教育現場の視点も交えながら分かりやすく解説します。
焦らず、お子さんと一緒に乗り越えるためのヒントを見つけていきましょう。
「学校に行きたくない」と言うのは珍しいことではない
結論から申し上げますと、子どもが登校を渋る、いわゆる「行き渋り」は非常に多くの家庭で起きています。文部科学省の調査でも不登校児童数は年々増加傾向にありますが、そこに至る前の「たまに行きたくないと言う」レベルであれば、クラスに何人もいるのが現状です。
低学年だけじゃない?全学年で起こりうる「行き渋り」の実態
「1年生だからまだ慣れていないだけ」と思われがちですが、実は学年を問わず発生します。
低学年は「母子分離不安(親と離れる寂しさ)」や「環境変化への戸惑い」が主ですが、中学年・高学年になると「友人関係の複雑化」や「学習内容の難化」が引き金になることもあります。どの年齢であっても、「行きたくない」という感情を持つこと自体は異常ではありません。
特に多いタイミング(月曜日、連休明け、行事の前後)
大人でも月曜日の朝に「会社に行きたくないな」と思うことがあるように、子どもも同じです。
特に以下のタイミングは要注意です。
- 月曜日の朝: 週末の楽しい時間から、規律のある学校生活への切り替えが難しい。
- 連休・夏休み明け: 長い休みの後、生活リズムを戻すのにエネルギーが必要。
- 運動会や発表会の前後: 練習の疲れや、本番へのプレッシャー、あるいは終わった後の燃え尽き症候群。
「小1の壁」と環境変化のストレス
特に小学1年生の場合、保育園や幼稚園とのギャップ(小1の壁)が大きな負担になります。
「遊び中心」から「勉強中心」へ。「先生が手取り足取り見てくれる」環境から「自分のことは自分でする」環境へ。45分間じっと座っているだけでも、子どもにとっては大変なストレスです。
「行きたくない」という言葉は、この急激な変化に対して「ちょっと疲れたよ」と休憩を求めているサインかもしれません。
子どもが「行きたくない」と感じる主な4つの原因
子ども自身も、なぜ行きたくないのか言葉にできないことが多々あります。「なんとなく」が本音であることも多いのです。ここでは主な原因を4つに分類して見ていきましょう。
1. 疲労と生活リズムの乱れ(身体的要因)
最も多いのが、単純な「疲れ」です。
重いランドセルを背負って歩く通学、慣れない勉強、給食の時間制限。学校生活は体力を使います。夜更かしをして睡眠不足だったり、週末に遊びすぎて疲れが残っていたりすると、朝起きるのが辛くなり、それが「行きたくない」という言葉に変換されます。
2. 友人関係や先生との相性(対人関係)
「友達に嫌なことを言われた」「仲間外れにされた気がする」といったトラブルは、子どもにとって死活問題です。また、特定の友達が苦手、先生が怖くて質問できない、といった人間関係の悩みも、登校を躊躇させる大きな要因になります。
3. 勉強への不安や授業中の緊張感(学習面)
授業についていけない、宿題が終わっていない、発表が嫌だ、といった学習面の不安も原因になります。特に、「間違えたら恥ずかしい」という気持ちが強いお子さんの場合、授業そのものがプレッシャーになっていることがあります。
4. 親と離れる不安・甘えたい気持ち(心理面)
特に低学年や、弟・妹が生まれたばかりの家庭で見られます。「学校に行っている間に、お母さんがいなくなっちゃうのではないか」「家でママとゆっくりしたい」という気持ちです。これは愛情不足ではなく、家が安心できる場所であるという証拠でもありますが、一時的な「赤ちゃん返り」のような甘えが出ることもあります。
まずはここから!親ができる初期対応のステップ
朝、子どもが泣いたり布団から出てこなかったりすると、親もパニックになります。どう対応するのが正解なのでしょうか。
ステップ1:否定せずに「気持ち」を受け止める
一番大切なのは、子どもの言葉を否定しないことです。
×「何言ってるの! 遅刻するわよ!」
○「そっか、今日は行きたくない気分なんだね」
まずはオウム返しで構いません。気持ちを受け止めてもらえるだけで、子どもは少し安心します。「行きたくない気持ち」を認めることと、「行かなくていい」と許可することは別です。まずは共感の姿勢を見せましょう。
ステップ2:休ませる?行かせる?判断の基準
ここが一番の悩みどころですが、以下の基準を参考にしてみてください。
- 身体症状がある場合(腹痛、頭痛、発熱など): 無理せず休ませるか、遅刻して様子を見ます。
- 単なる寝坊や気分の問題: 「じゃあ、学校の門まで一緒に行ってみようか」「1時間目だけ行ってみよう」と、ハードルを下げて提案します。
- いじめなど深刻な理由が疑われる場合: 無理に行かせるのは危険です。休ませてじっくり話を聞く時間を確保しましょう。
「今日1日休んだら、一生行けなくなるのでは?」と不安になる必要はありません。エネルギーを充電するために「戦略的に休む」ことも時には必要です。
ステップ3:学校(担任の先生)への連絡と連携
遅刻や欠席をする場合は、正直に学校へ伝えましょう。
「お腹が痛いと言っていますが、精神的なものかもしれません」「実は朝、行きたくないと泣いていまして」と伝えておくことで、先生も学校での様子を気にかけてくれます。
学校での様子(休み時間は誰と遊んでいるか、給食は食べているか)を聞くことで、家では見えない原因が見えてくることもあります。
状況を悪化させないためのNG行動・NGワード
親の焦りからくる行動が、かえって子どもを追い詰めてしまうことがあります。以下の行動はできるだけ避けましょう。
理由をしつこく問い詰める「なんで?」
「なんで行きたくないの?」「誰かに何かされたの?」と詰問するのは逆効果です。子ども自身も理由がわからず混乱していることが多いからです。
理由を聞くときは、「何か嫌なことがあった?」とYes/Noで答えられる質問にするか、落ち着いている夜の時間帯にゆっくり話を聞くのがおすすめです。
無理やり連れて行く・突き放す
泣き叫ぶ子どもを引きずって連れて行ったり、「行かないなら家から出ていきなさい!」と怒鳴ったりするのは、子どもの心を深く傷つけます。「学校=怖い場所」「親=味方してくれない」という認識を植え付け、事態を長期化させる恐れがあります。
「みんな行っているのに」と他人と比較する
「近所の〇〇ちゃんは元気に行ってるよ」「お兄ちゃんは休まなかったよ」という比較は、子どもの自尊心を傷つけます。「自分はダメな子なんだ」と思い込ませてしまい、意欲をさらに低下させてしまいます。
「行きたくない」が続く場合の長期的な向き合い方
もし「行きたくない」が数日、数週間と続くようであれば、長期戦を覚悟して腰を据える必要があります。
「不登校」という言葉に怯えすぎない
今の時代、学校以外の学びの場や選択肢はたくさんあります。「学校に行けないこと=人生の終わり」ではありません。まずは「今、この子は充電期間なんだ」と捉え直し、親自身が過度な不安を手放すことが、結果的に子どもの安心感につながります。
家庭を「安心できる基地」にする重要性
学校でエネルギーを消耗している分、家は「何もしなくても許される場所」「ありのままの自分でいられる場所」にしてあげてください。
「学校に行かないならゲーム禁止!」と厳しくしすぎるよりも、まずは心身の健康を取り戻すことを最優先にしましょう。元気になれば、自然と「暇だな、何かしたいな」という意欲が湧いてきます。
専門家やスクールカウンセラーへの相談
親だけで抱え込むのは限界があります。学校にはスクールカウンセラーが配置されていますし、自治体の教育相談センターなどもあります。
第三者が入ることで、親も子も冷静になれることがあります。「相談する」ことは恥ずかしいことではなく、子どもを守るための立派な行動です。
まとめ
子どもが「小学校に行きたくない」と言うのは、成長過程で起こりうる「普通」の反応です。
それは、疲れのサインかもしれないし、新しい環境で頑張っている証拠かもしれません。
大切なのは、以下の3点です。
- まずは「行きたくない気持ち」を受け止める(否定しない)。
- 無理やり行かせようとせず、子どもの様子を観察する。
- 親一人で悩まず、学校や専門家を頼る。
親御さん自身も、毎朝の対応で心身ともに疲れてしまっているかもしれません。まずは親御さんが深呼吸をして、肩の力を抜くことが、お子さんの安心への第一歩です。
もし、「どう対応していいか分からない」「ついイライラして怒ってしまう」と悩んでいるなら、一人で抱え込まずに専門家に相談してみませんか?
プロのアドバイスを受けることで、お子さんに合った具体的な解決策が見つかるはずです。

