育児書を読み込み、栄養バランスを考えた食事を作り、子供の睡眠時間や発達段階にも気を配っている。周囲から見れば「理想的な親」そのもの。それなのに、ふとした瞬間に胸が押しつぶされそうな不安に襲われることはありませんか?
「私の育て方は本当に合っているの?」
「将来、子供が不幸になったらどうしよう」
「もっといい方法があったのではないか」
もしあなたが今、このような気持ちを抱えているなら、まずお伝えしたいことがあります。
それは、あなたが「ちゃんとやっている」からこそ生まれる感情だということです。
いい加減に育児をしている人は、そもそも「これでいいのか」と悩みません。あなたの不安は、子供への深い愛情と責任感の裏返しなのです。しかし、その不安が強すぎると、あなた自身の心が壊れてしまいかねません。
この記事では、真面目なパパ・ママほど陥りやすい「育児不安の正体」を解き明かし、少しでも肩の荷を下ろすための考え方と対処法を解説します。
なぜ「ちゃんとやっている」のに不安が消えないのか? 5つの心理的理由
育児や家事をしっかりこなしているのに、なぜか自信が持てず不安になる。その背景には、現代特有の環境や心理的なメカニズムが働いています。
①「理想の母親・父親像」が高すぎる(完璧主義の罠)
「ちゃんとする」の基準が、無意識のうちに高くなりすぎていませんか?
- いつも笑顔でいなければならない
- 家の中は常に片付いていなければならない
- 手作りの食事でなければならない
- 子供の要求にはすべて応えなければならない
真面目な人ほど、「〜すべき(Should思考)」にとらわれがちです。100点満点を目指すがゆえに、90点取れていても「足りない10点」ばかりが気になり、「自分はまだダメだ」と不安を感じてしまいます。これを心理学的には「認知の歪み(完璧主義)」と呼びます。
② SNSによる「無意識の比較」と情報の過多
InstagramやX(旧Twitter)を開けば、おしゃれな部屋でニコニコ笑う親子や、知育に励む様子が流れてきます。
「みんなこんなにキラキラしているのに、私はイライラしてばかり…」
SNSで見えるのは、他人の生活の「切り取られた最高の瞬間」だけです。しかし、脳はそれを見て無意識に自分の「日常(大変な部分)」と比較してしまいます。また、育児情報は諸説あり、「〇〇はダメ」「〇〇すべき」という矛盾した情報が溢れているため、正解を探せば探すほど迷宮入りし、不安が増幅します。
③ 育児には「完了」も「明確な正解」もないから
仕事であれば、「プロジェクト完了」「売上達成」といった明確なゴールや評価があります。しかし、育児には「ここまでやればOK」という明確な終わりがありません。
今日うまくいっても、明日はうまくいかないのが育児です。「成果」が見えにくいため、達成感を得られず、「これでいいのだろうか」という漠然とした不安が続きやすいのです。
④ 「減点方式」で自己評価をしている
「今日は子供に怒ってしまった」「夕食がお惣菜になってしまった」など、1日の終わりに自分の行動を「減点方式」で採点していませんか?
ちゃんとできている部分は「当たり前」としてスルーし、できなかったことだけを数え上げれば、誰だって自信を失い、不安になります。
⑤ 睡眠不足とホルモンバランスによる生理的要因
精神論だけでなく、身体的な要因も無視できません。特に乳幼児期は慢性的な睡眠不足になりがちです。睡眠不足は、脳の扁桃体(不安や恐怖を感じる部位)を過敏にさせ、ネガティブな感情を引き起こしやすくします。
また、産後のホルモンバランスの乱れは、本人の性格に関係なく、情緒を不安定にさせる強力な要因です。
「ちゃんと育てなきゃ」という呪縛を解く考え方
不安の正体がわかったところで、次は少し視点を変えてみましょう。完璧を目指すのをやめることは、決して「手抜き」ではありません。
「Good Enough Mother(ほどよい母親)」という概念
イギリスの小児科医ウィニコットが提唱した「Good Enough Mother(ほどよい母親)」という言葉をご存知でしょうか?
子供にとって必要なのは、完璧な親ではなく、失敗もしながら人間らしく関わってくれる「ほどよい親」です。
完璧な親の元では、子供は「失敗への対処法」や「不完全な他者を許す心」を学べません。親が適度に力を抜き、時には失敗する姿を見せることは、子供の自立や社会性を育む上でもプラスになるのです。
子供にとっての「一番」は、親が笑顔でいること
子供は親の表情をよく見ています。
栄養満点の手料理でも、作っている親が眉間にシワを寄せてイライラしているより、買ってきたお惣菜でも、親が「これ美味しいね!」と笑顔で食べている食卓の方が、子供の心は満たされます。
あなたの笑顔こそが、子供にとって最高の栄養であり、安心材料なのです。
不安を感じるのは、子供を愛している証拠
不安になるのは、「どうでもいい」と思っていないからです。
「不安を感じてしまう自分は弱い」と責めるのではなく、「こんなに不安になるくらい、私はこの子を大切に思っているんだな」と、自分の愛情の深さを認めてあげてください。
今すぐできる!育児不安を和らげる具体的なアクション
考え方を変えるのは時間がかかりますが、行動を変えることは今日からできます。不安な気持ちを物理的に減らすためのアクションを紹介します。
情報の断捨離(デジタルデトックス)
不安が強い時期だけでも、SNSを見る時間を制限しましょう。
- キラキラした育児アカウントのフォローを外す
- スマホを見る時間を決め、寝る前は画面を見ない
- 育児書を一度閉じて、目の前の子供の反応だけを見る
「検索」をやめるだけで、驚くほど心が静かになることがあります。
「できたこと」に目を向ける3行日記
減点方式をやめるためのトレーニングです。寝る前に、その日「できたこと」や「良かったこと」を3つだけ書き出してみてください。
- 子供がうんちをした(健康!)
- 絵本を1冊読んであげた
- 自分もちゃんとご飯を食べた
どんなに些細なことでも構いません。「あるもの」に目を向ける習慣がつくと、自己肯定感が少しずつ回復します。
1日10分でも「親という役割」を脱ぐ時間を作る
24時間365日、常に「親モード」でいることは不可能です。意識的に「個人の自分」に戻る時間を確保してください。
- 好きなコーヒーを飲む
- 推しの動画を見る
- ただぼーっとする
この時間は「浪費」ではなく、明日も笑顔でいるための「投資」です。パートナーや一時保育、ファミリーサポートなどを利用して、罪悪感なく時間を確保しましょう。
第三者への相談・プロの手を借りるハードルを下げる
「ちゃんとやらなきゃ」と思う人ほど、他人に頼ることを「甘え」と感じがちです。しかし、昔は地域全体で育てていた子供を、今は核家族で育てているのですから、手が足りないのは当たり前です。
家事代行サービスを使う、ベビーシッターに頼む、自治体の育児相談を利用する。これらは「育児のチームメンバー」を増やす賢い選択です。
注意が必要な「不安」のサインとは?
多くの不安は工夫次第で和らぎますが、中には専門的なケアが必要な場合もあります。
産後うつ・育児ノイローゼの可能性
以下の症状が2週間以上続く場合は、一人で抱え込まず、医療機関や保健センターに相談してください。
- わけもなく涙が出る
- 子供が可愛いと思えない、または過度に心配になる
- 眠れない、または食欲がない
- 何に対しても興味がわかない
- 「消えてしまいたい」と思うことがある
これらはあなたの性格や努力不足のせいではなく、脳の機能的な問題やホルモンの影響です。風邪を引いたら内科に行くように、心の不調も専門家の助けを借りることで回復します。
まとめ
「ちゃんと育てなきゃ」と不安になるのは、あなたがそれだけ真剣に子供と向き合っている証拠です。
しかし、その真面目さがあなた自身を苦しめているのなら、少しだけ「合格ライン」を下げてみてください。
60点で十分。笑っていれば100点満点。
子供が求めているのは、完璧な親ではなく、幸せそうな親です。
まずは今日、頑張っている自分自身に「よくやってるよ」と声をかけてあげてください。
