保育園や幼稚園、学校の先生から、
「みんなと一緒に行動するのが少し苦手です」
「集団活動に入らず、一人でいることがあります」
と言われると、
「うちの子だけ?」
「発達に問題があるの?」
「家庭で何か練習させた方がいい?」
と心配になることがあります。
しかし、集団行動が苦手だからといって、それだけで「問題がある」「発達障害である」と判断することはできません。
初めての場所が苦手だったり、大人数だと緊張したり、何をすればよいか分からなかったりと、集団に入りにくくなる理由は子どもによってさまざまです。
大切なのは、無理に周りと同じ行動をさせることではなく、「どんな場面で困っているのか」を確認し、その子が参加しやすい方法を考えることです。
この記事では、集団行動が苦手になる主な理由、家庭でできる対応、年齢に合わせた関わり方、相談を考える目安について解説します。
集団行動が苦手なだけで問題があるとは限らない
集団行動が苦手な子を見ると、
「協調性がないのでは?」
「わがままなのでは?」
「もっと厳しく教えるべき?」
と考えてしまうことがあります。
しかし、子どもが集団に入れない背景には、
・何をすればよいか分からない
・初めての活動で不安になっている
・大人数や大きな音が苦手
・遊びを途中でやめるのが難しい
・言葉だけの説明では理解しにくい
・長時間集中するのが難しい
など、さまざまな理由があります。
単に「やりたくないから参加しない」とは限りません。
まずは子どもの性格や行動を責めるのではなく、
「どのような状況なら参加できるのか」
を探していくことが大切です。
集団行動が苦手になる主な理由
初めての場所や活動に不安を感じる
初めての場所や、経験したことのない活動を苦手とする子がいます。
たとえば運動会の練習でも、
「次に何をするの?」
「いつ終わるの?」
「どこへ行けばいいの?」
が分からなければ、不安になって参加できないことがあります。
こうした場合は、活動そのものが嫌なのではなく「先が分からないこと」が負担になっている可能性があります。
大人数や音などの刺激が苦手
家庭では落ち着いて過ごせていても、大勢の子どもがいる場所では疲れてしまう子もいます。
園や学校には、
・子どもの話し声
・先生の声
・チャイム
・音楽
・人の動き
・照明
など、家庭より多くの刺激があります。
刺激が多い場所で落ち着きにくくなる場合は、本人にとって集団にいるだけでも大きな負担になっていることがあります。
活動を切り替えるのが苦手
好きな遊びをしている途中に、
「片付けて、今からみんなで体操します」
と言われても、すぐには切り替えられない子がいます。
大人でも、集中している途中で急に別のことを求められると戸惑うことがあります。
子どもの場合はさらに、
遊ぶ
↓
片付ける
↓
並ぶ
↓
次の活動をする
という複数の切り替えが負担になることがあります。
言葉だけの指示では分かりにくい
先生から、
「準備ができた人から並んで、順番に外へ行きましょう」
と言われたとします。
大人なら自然に理解できますが、子どもによっては、
「何を準備するの?」
「どこに並ぶの?」
「今すぐ?」
と分からなくなることがあります。
一度に多くの指示を受けることが苦手な場合は、短く具体的に伝えると行動しやすくなることがあります。
友達との関わり方が分からない
「一緒に遊びたいけれど声をかけられない」
という子もいます。
また、
・遊びのルールが分からない
・順番を待つのが難しい
・友達の気持ちを読み取りにくい
・自分の気持ちをうまく伝えられない
などの理由から、集団遊びを避けることもあります。
「友達に興味がない」と決めつけず、本人がどこで困っているのかを見ていきましょう。
集中が長く続かない
朝の会、授業、発表会の練習など、一定時間じっと参加することが難しい子もいます。
集中できる時間には個人差があります。
特に、
・活動時間が長い
・説明を聞くだけの時間が長い
・本人が興味を持ちにくい
といった状況では、集団から離れやすくなることがあります。
疲れ・眠気・空腹などが影響している
いつでも集団行動が苦手とは限りません。
「午前中は参加できるのに午後は難しい」
という場合には、疲れや眠気などが影響している可能性もあります。
特定の場面だけで困っているのか、さまざまな場面で同じことが起きるのかを確認しておくと、理由を考えやすくなります。
年齢別|集団行動が苦手な子への関わり方
年齢だけで「これくらいできるはず」と判断する必要はありません。
ここでは年齢ごとに、取り入れやすい関わり方を紹介します。
2~3歳頃
小さな子どもは、まだ集団のルールに合わせる経験そのものが少ない時期です。
最初から、
「みんなと同じように最後まで参加する」
ことを目標にする必要はありません。
まずは、
・親や先生と一緒に参加する
・短い時間だけ参加する
・少人数から始める
・好きな活動から参加する
など、小さな経験を積んでいきましょう。
「5分参加できた」
だけでも大きな一歩です。
4~6歳頃
園での集団活動が増えてくる時期です。
この頃には、
「次は何をするのか」
を事前に伝える方法が役立つことがあります。
たとえば、
「今から朝の会」
↓
「そのあと外遊び」
↓
「終わったら給食」
と順番を伝えます。
写真・絵・予定表などを使うと、言葉だけより理解しやすい子もいます。
小学生
学校では、園よりも長い時間集団で行動する場面が増えます。
授業だけでなく、
・朝の会
・給食
・掃除
・体育
・係活動
・学校行事
などがあります。
小学生の場合は、
「集団行動ができない」
という大きなくくりではなく、
「体育の整列が苦手」
「グループ活動で何をすればよいか分からない」
「予定変更があると動けなくなる」
など、困っている場面を細かく分けて考えましょう。
学校の先生と情報を共有し、本人が参加しやすい方法を一緒に考えることも大切です。
家庭でできる7つの対応
1.園や学校で困っている場面を具体的に聞く
先生から、
「集団行動が苦手です」
と言われたら、それだけで判断せず具体的な場面を聞いてみましょう。
たとえば、
・朝の会だけ離れるのか
・運動会など特別な行事だけなのか
・遊びでは友達と関われているのか
・声をかけると参加できるのか
・どれくらいの時間なら参加できるのか
などです。
「できる・できない」だけではなく、できる条件を探すことが重要です。
2.無理やり集団に入れない
「みんなやっているから行きなさい」
と無理に参加させると、集団活動そのものへの不安が強くなる場合があります。
嫌がる理由を確認せず、
「わがまま」
「恥ずかしがり屋だから」
「慣れれば大丈夫」
と決めつけるのも避けましょう。
まずは参加しにくい理由を探し、負担を減らす方法を考えます。
3.予定を事前に伝える
先が分からないと不安になる子には、予定を先に伝えておきます。
たとえば、
「今日は公園に行ったら、みんなでゲームをするよ。そのあとお弁当だよ」
というように簡単に説明します。
初めて行く場所なら写真を見せる方法もあります。
「何をするのか分からない」という不安を減らすだけで、参加しやすくなることがあります。
4.指示は短く一つずつ伝える
一度に、
「おもちゃを片付けて、帽子を取って、靴を履いて玄関に来て」
と伝えるのではなく、
「まずおもちゃを片付けよう」
↓終わったら
「次は帽子を取ろう」
というように分けて伝えます。
指示を理解しやすくすると、集団行動についていきやすくなる場合があります。
5.少人数で練習する
大人数が苦手なら、最初から大きな集団へ入る必要はありません。
家族
↓
友達1人
↓
少人数
↓
大きな集団
というように、参加しやすい人数から経験を重ねる方法があります。
集団に慣れさせること自体を目的にするのではなく、
「安心して人と関われた」
という経験を増やすことを意識しましょう。
6.できた部分を具体的に伝える
集団活動の最後まで参加できなかったとしても、
「最初の体操には参加できたね」
「順番を待てたね」
「先生のところまで行けたね」
など、できた部分を具体的に伝えます。
「全部できたかどうか」だけで評価しないことが大切です。
小さな成功を積み重ねることで、次の活動へ参加する自信につながることがあります。
7.困りやすい条件を記録する
いつもではなく、特定の状況で困っている場合があります。
簡単に、
・いつ
・どこで
・何をしていたか
・直前に何があったか
・どのくらい続いたか
・何をしたら落ち着いたか
をメモしてみましょう。
記録してみると、
「予定が急に変わった日に多い」
「大人数の活動だけ難しい」
「疲れている午後に起きやすい」
などの傾向が見つかることがあります。
集団行動が苦手な子に避けたい対応
他の子と比べる
「○○ちゃんはできているよ」
「みんなちゃんと座っているよ」
と言われても、本人が何に困っているのかは解決しません。
むしろ、
「自分だけできない」
と感じ、自信を失ってしまうことがあります。
子どもの成長や得意・苦手には個人差があります。
周りの子ではなく、その子自身の以前の様子と比べていきましょう。
関連記事:他の家庭と比べて落ち込むときの対処法|SNS・お金・子育てで劣等感を抱いたときに
何度も叱る
できない理由が分からないまま、
「ちゃんとしなさい」
「みんなと一緒にしなさい」
と繰り返しても改善しにくい場合があります。
叱る前に、
「何が分からなかったのか」
「どこで難しくなったのか」
を確認してみましょう。
いきなり苦手な集団へ入れる
「慣れればできるようになる」
と考えて、強い不安を感じている場所へ何度も無理に参加させるのは避けた方がよいでしょう。
小さな集団や短い時間から始め、本人が安心して参加できる経験を増やしていく方が取り組みやすくなります。
集団行動が苦手だと発達障害なの?
集団行動が苦手という一つの行動だけで、発達障害かどうかを判断することはできません。
発達障害のある子どもの中には、
・集団活動へ参加しにくい
・切り替えが苦手
・コミュニケーションで困る
・注意を維持することが難しい
・刺激に敏感
といった特徴が見られることがあります。
一方で、発達障害がなくても、
・新しい環境への緊張
・性格
・経験の少なさ
・疲れ
・その場の環境
などによって集団活動を苦手に感じることがあります。
家庭だけで診断しようとするのではなく、本人がどのような場面でどれくらい困っているのかを見ることが大切です。
相談を考えた方がよい目安
集団行動が苦手でも、少しずつ参加できていて本人も困っていないなら、すぐに専門機関へ行かなければならないわけではありません。
一方で、次のような状態が続く場合は、一度相談してみてもよいでしょう。
・集団活動を強く嫌がる状態が長く続いている
・園や学校から繰り返し相談を勧められている
・本人が集団生活をとてもつらそうにしている
・友達とのトラブルが何度も続いている
・授業や園生活への参加が難しい
・家庭以外の複数の場所で同じ困りごとがある
・言葉・コミュニケーション・行動など、ほかの発達面も気になる
・本人や家族の負担が大きくなっている
相談することは、必ずしも診断を受けることを意味するものではありません。
「どうすれば参加しやすくなるか」
を一緒に考えてもらうために利用することもできます。
どこに相談すればいい?
保育園・幼稚園の先生
まずは普段の様子を一番よく見ている先生に聞いてみましょう。
家庭では見えない集団生活での様子を確認できます。
学校の先生
小学生以降なら担任の先生に相談します。
学校によっては特別支援教育コーディネーターなどに相談できる場合もあります。
市区町村の相談窓口
市区町村には、子どもの発達や子育てについて相談できる窓口があります。
こども家庭センターなどで相談を受け付けている地域もあります。
発達障害者支援センター
各都道府県・指定都市には、発達障害者支援センターがあります。
発達に関する困りごとについて、本人や家族から相談できます。
医療機関
発達面について詳しく確認したい場合は、かかりつけの小児科などへ相談する方法があります。
必要に応じて専門の医療機関を案内してもらえる場合があります。
よくある質問
一人遊びが好きなだけでも心配した方がいい?
一人遊びが好きだからといって、それだけで問題とはいえません。
一人で集中して遊ぶことを好む子もいます。
見るポイントは、
「一人で遊ぶこと」
そのものではなく、本人が友達と関わりたいのに関われず困っているか、園や学校生活に大きな支障があるかです。
家では普通なのに園では集団行動ができないのはなぜ?
家庭と園では環境が大きく違います。
園には多くの人・音・ルール・予定変更があります。
家庭では問題なくても、刺激の多い集団では難しくなることがあります。
先生に「どの活動で難しくなるのか」を聞いてみましょう。
先生から集団行動が苦手と言われたらどうすればいい?
まずは、
「具体的にどんな場面ですか?」
と確認してください。
そのうえで、
・参加できる活動
・難しい活動
・声をかけると参加できるか
・少人数ならどうか
・本人はどんな様子か
を聞きます。
家庭と園・学校で情報を共有して対応を考えていきましょう。
無理にでも参加させた方が慣れる?
必ずしもそうではありません。
強い不安を感じている子に無理強いすると、集団活動への苦手意識が強くなる場合があります。
まずは理由を確認し、短い時間や少人数など参加しやすい条件から始める方法があります。
集団行動が苦手なのは親の育て方が原因?
集団行動が苦手になる理由は一つではありません。
「しつけが足りなかったから」と保護者だけの責任にする必要はありません。
子どもの特徴や環境、活動内容などを確認しながら、その子に合った方法を考えていくことが大切です。
まとめ|「みんなと同じ」より参加しやすい方法を探そう
集団行動が苦手だからといって、それだけで問題があるとは限りません。
参加できない背景には、
・見通しが持てない
・刺激が多い
・切り替えが難しい
・指示が分かりにくい
・友達との関わり方が分からない
・集中が続きにくい
など、さまざまな理由があります。
家庭では、
・園や学校での様子を詳しく聞く
・無理強いしない
・予定を事前に伝える
・指示を一つずつ伝える
・少人数から経験する
・できた部分を具体的に認める
といった方法を試してみましょう。
大切なのは「みんなと同じようにできるようにすること」だけではありません。
その子が何に困っているのかを知り、安心して参加できる方法を見つけていくことが大切です。
本人の困りごとが大きい、園や学校生活への影響が続いている、ほかの発達面にも心配がある場合は、園・学校・自治体の相談窓口などへ相談してみましょう。


